日頃から芸術的感性を磨いておきなさい。これは前職の上司から言われたアドバイスで非常に心に残っているものです。
絵を描くことが苦手で、楽器ができない私にとっての芸術とは、悩んだ挙句、親しくして頂いている大学の先輩の1人に京都在住の陶芸家の先生がいたのでとりあえず陶芸教室に参加してみることにしたことが私と陶芸との出会いでした。
作務衣を着て静寂の中、寡黙にロクロを回し作品を作り上げる。これが私が抱いていた陶芸のイメージでしたが、教室が始まると同時にそのイメージは吹飛びました。
先生はチノパンにポロシャツという格好であらわれ、ロクロの横には阪神タイガースの試合が放送されているテレビが置かれている中でカップをつくるという課題に取組むことになりました。
大学の先輩と後輩という関係もあり、先生は非常によくしゃべり、以前に陶芸教室に参加した人々の話や注射嫌いを克服した話など、指導の合間に雑談があるというより雑談の合間に指導があるといった感じでした。しかしやはり指導は非常に適切で私がロクロの操作を失敗した時もいとも簡単に修正してくれました。なんとかカップらしきものは仕上がりましたが、先生曰く、「カップというよりちょっと変わった物入れやな」とのことでした。この先生は年に数回、有名デパートなどで個展を開催されていますが、今回京都で他の陶芸家の先生方と個展を開かれるとのことだったので訪れてみました。
会場は以前は呉服商であったという大変風情のある町家を借りて開催されていました。ちょうど忙しさのピークが過ぎた時間であった為、作品を前にお互いの近況をゆっくりと話すことができました。中庭も素晴らしい日本庭園で抹茶とお菓子を頂きながら縁側で涼しい風に吹かれながら夏の終わりの夕暮れのひと時を堪能しました。先輩はこの後は横浜で個展をされるそうで非常に精力的に動かれている印象を受けました。いつでも明るく、楽しげな様子は本当に見習いたいと思います。
最後にそのうちお互いの仕事で、英語と陶芸のコラボが出来たらいいねという話をしました。どんな小さなことであれ、いつか実現させたいなと思います。

